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吉田研究室の研究テーマ

電波は目で見ることはできませんが,今まさに皆さんの目の前にも色々な電波が飛び交っています.電波の存在が発見されて今日に至るまで,電波は情報通信に応用され,地球の裏側にいる人とも瞬時にコミュニケーションがとれるようになりました.皆さんがよく使っているスマートフォンも,電波を使って通信をしています.他にも各家庭によくある電子レンジも,電波を使って食品を加熱しています.特に近年では,新しい電波の応用例として,電波の電力伝送への応用について世界中で熾烈な研究競争が始まっています.このように,電波を使った技術により,我々の日常生活は快適で,利便性の高いレベルに進化してきました.電波を使う技術は,従来の電線(ワイヤ)を使わないで良くなるので「ワイヤレス技術」と呼ばれています.吉田研究室では,ワイヤレス技術を活用するシステムのうち,主にハードウェアよりの研究を行っています.このページでは,以下5項目についてその概要を説明します.

モバイル端末内蔵用マイクロ波・ミリ波アンテナ
マイクロ波電力伝送とワイヤレス通信の共存共栄手法
銅ボールによる基板間ミリ波信号伝送線路の実装歩留まり改善手法
広帯域マイクロ波整流器
ミリ波電力伝送用整流器およびレクテナ

モバイル端末内蔵用マイクロ波・ミリ波アンテナ

 スマートフォンやタブレット端末など,ワイヤレス通信機能がついている機器にはアンテナという部品が必ず使われています.アンテナとは,空中に存在する電波のエネルギーを効率よく集める,または逆に空中へ電波のエネルギーを効率よく放出するためのハードウェアです.吉田研究室ではスマートフォンやタブレット端末などのモバイル端末内に内蔵できるマイクロ波・ミリ波アンテナの研究を行っています.最新の移動通信規格は5Gと呼ばれていますが,その次の6G/7Gを見据えて,5Gで使われる最高周波数帯である28 GHz帯よりも高い周波数帯となる60 GHz帯に対応したアンテナを一つのテーマにしています.
 周波数が数ギガヘルツ程度のマイクロ波帯に比べて60 GHz帯の電波は空中を伝わる際の直進性が高く,伝送損失が大きい特徴があります.その損失をカバーするため,利得と呼ばれるアンテナの評価指標が大きい必要があります.しかし,利得とビーム幅はトレードオフの関係にあるため,レーザーポインタのようにピンポイントで送受信間のアンテナ同士の向きを合わせる必要性が増します.少しでもその向きがずれてしまうと,通信が途切れてしまう点が課題となりますが,この課題を解決するために多方向にビームを作ることができる60 GHz帯アンテナ構造の設計・試作・測定を行っています.最新の成果では基板に対して水平および垂直の2方向にビームを作ることができるタイプを提案したレター論文が採録となりました.今後より多方向にビームを形成できるタイプの提案に向けて研究を行っています.

© 2022 IEEE. Reprinted, with permission, from IEEE AWPL (doi: 10.1109/LAWP.2021.3063098). Permission number of reuse in RightsLink® service: 5256410523852.

マイクロ波電力伝送とワイヤレス通信の共存共栄手法

 スマートフォンやタブレット端末,ゲーム機などの電子機器にワイヤレス通信機能が付加されることは今となっては当たり前のことになってしまいました.ワイヤレス通信機能により利便性が高まったり,新しい使途が提案されたり,今後も新しいサービスが生まれてくることでしょう.しかし,それらの電子機器の駆動電力供給方法に目を向けてみると,バッテリーに有線充電を行う方法が主流となっています.たまにしか使わない機器は,バッテリーが自然放電してしまって,使いたいときに使えなかったり,スマートフォンのように頻繁に手にする機器であったとしても充電を忘れたり,使いすぎると電池切れになったりしますね.そのような課題を解決するためには,充電も通信と同じようにワイヤレス化すれば良いのです.線を繋ぐ作業が不要になることから,サービスエリア内にある機器は,無意識のうちに充電されることになるため,充電を忘れることがなくなります.
 この画期的なアイディアを実現する技術が無線電力伝送(ワイヤレス給電)です.吉田研究室ではコイルを用いるタイプではなく,より遠くにエネルギーを伝送可能な電波を用いるタイプの無線電力伝送システムに焦点を当て,同じく電波を用いる通信と対立するのではなく,共存共栄できるシステム構成について研究を進めています.従来は時分割や周波数分割方式で無線通信と無線電力伝送を両立させていましたが.時間を分けたり,周波数をいくつか使ったりするため,時間及び周波数利用効率が悪い点が技術的課題でした.
 2021年度からJSTの創発的研究支援事業(創発)においてこの課題を解決できる新しいシステム構成の研究を行っています. 現在進行中のため,詳しく紹介はできませんが,成果は今後,学術論文誌等において発表して行く予定です.

【謝辞】本研究の一部は,JST 創発的研究支援事業の支援によるものです.

創発の研究者紹介ページ(下から4番目)

銅ボールによる基板間ミリ波信号伝送線路の実装歩留まり改善手法

 スマートフォンや電子辞書,パソコンやテレビの中にはプリント基板が入っています.プリント基板はプラスチック板のように薄くて硬い平らな板ですが,その表面には銅箔が貼られていて,その銅箔には細かなパターンが形成されており,電気配線として使われています.そのプリント基板にLSIやコンデンサ,抵抗などの電子部品が搭載され,各種機能を持つ部品が構成されます.部品の数が多くなれば,基板サイズが大きくなってしまいます.小型・軽量化の為には,一つ一つの電子部品を小型化することも必要ですが,全く別の手法として基板を重ねてしまうことも有効です.しかし,これまで基板を積層する場合,基板同士の固定にはスペーサーやネジを用いていたため,製造プロセスが煩雑になる点が課題でした.さらに高周波信号の基板間伝送が必要となる場合には同軸コネクターを基板上に実装し,同軸ケーブルで接続する形態がとられていましたが,同じく製造プロセスの煩雑化,伝送損失の増大,機械耐性の弱化が問題でした.
 そこで吉田研究室では銅ボールを用いる基板の積層手法について研究を進めています.特に最近では実装歩留まりと呼ばれる製作の失敗率を下げるため,銅ボール搭載箇所に堀りこみ構造を設ける手法を提案しました.銅ボールを用いることで,基板同士の物理的な固定と高周波信号の基板間伝送を同時に実現することができます.さらに,既存のBGAと呼ばれるLSIの実装装置との互換性が高いため,量産化の際の設備投資が最小限で済む点もメリットとなります.

Ref. S. Yoshida and K. Nishikawa, “Experimental Verification of Excavated Structure on Multi-Layered Substrates for Millimeter-Wave Signal Vertical Transition Using Copper Balls,” in IEEE Access, vol. 8, pp. 2362-2372, 2020, doi: 10.1109/ACCESS.2019.2961624.

広帯域マイクロ波整流器

 皆さんが日頃使っているスマートフォンは,電波を用いてワイヤレスで通信を行っています.その電波の周波数は低いほうで700 MHz程度のUHF帯と呼ばれる周波数帯から,上は5 GHz程度のマイクロ波帯までに及びます.マイクロ波整流器は,マイクロ波の電波のエネルギーを直流の電気エネルギーに変換するハードウェアですが,吉田研究室では,このように広い周波数帯に対応できる広帯域整流器の研究を実施しています.従来の整流器は,ある特定の周波数前後の比較的狭い周波数範囲にしか対応しておらず,対応しない周波数の電波エネルギーを効率よく収集できていませんでした.そのため,より広い周波数に対応できるようにすることで,これまで取出すことができなかった周波数帯のエネルギーも収集できるので,より多くのエネルギーを得ることができます.

© 2022 IEEE. Reprinted, with permission, from IEEE MWCL (doi: 10.1109/LMWC.2022.3143844). Permission number of reuse in RightsLink® service: 5256420054068.

ミリ波電力伝送用整流器およびレクテナ

 最新の移動通信システムは5Gと呼ばれ,すでに5G対応のスマートフォンも市販されています.5Gでは従来の4G(LTE)に比べて高速な通信を行うため,より高い周波数帯となるミリ波と呼ばれる電波も使うようになりました.そこで我々は電波のエネルギーをモバイル端末の駆動電力として活用するため,ミリ波の電波エネルギーを直流エネルギーに変換するミリ波整流器と呼ばれるハードウェアの研究を行っています.これまでミリ波よりも低い周波数帯となるマイクロ波の整流器の研究報告が多数を占めていましたが,ミリ波に対応する整流器の報告も5Gの登場とともに増え始めてきています.まだミリ波整流器の報告が少ない理由として,ミリ波に対応できるダイオードと呼ばれる半導体デバイスが高価で製品の選択肢が少なく,入手性が悪いこと,さらに回路設計のためのダイオードモデル構築が困難であること,整流器製作において高い寸法精度が必要であることなどが挙げられます.吉田研究室ではこれらの課題解決に取り組んでおり,ダイオードモデリングから回路設計,部品実装,測定まで一貫した体制で研究を行っています.
 さらに吉田研究室では,整流器とアンテナを一体化したレクテナと呼ばれるハードウェアの研究も行っています.特にミリ波信号は,伝送線路を通る際の伝送損失が大きいため,整流器とアンテナをつなぐ伝送線路は最短にすべきです.吉田研究室では3つ目の研究項目で紹介した銅ボールによる基板間ミリ波信号伝送技術を応用し,伝送線路長を最小化できるミリ波レクテナ実現に向けた研究も行っています.そのために3次元電磁界シミュレーションによる伝送線路設計,評価も行っています.

龍谷大学 先端理工学部

電子情報通信課程

吉田研究室

〒520-2194 滋賀県大津市瀬田大江町横谷1-5

Yoshida Laboratory,

Faculty of Advanced Science and Technology,
Course of Electronics, Information and Communication Engineering,

Ryukoku University,

1-5 Yokotani, Seta Oe-cho, Otsu, Shiga 520-2194, Japan

Yoshida Lab
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